in motion 2003 - 増幅
Live at Kamakura Performing Arts Center | Nov.15-16 2003

MWSストア
特別販売
2004.4.21
予約開始
2004.5.28
発売

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All words and music written by Motoharu Sano
佐野元春(詩・朗読・作曲)
井上 鑑(作/編曲・ピアノ・シンセサイザー)
山木秀夫(ドラムス・パーカッション)美久月千晴(ベース)金子飛鳥(ヴァイオリン)


僕らにはスポークンワーズがある  後藤繁雄
(ライブパンフより)

 都市に生きる者たちはみな、巣穴を見失った蟻たちのように右往左往している。キーボードを叩くだけで、金も情報も国境を超えてゆく。異常気象の熱に北極の氷河は砕けてゆく。

 誰もが地球の上にいて、誰もが幽霊みたいに存在しない、奇妙な星。彼らは、爆弾が雨のように降っても、TVの中の番組に過ぎないと思う。彼らは、その日のメシもありつけないのに、ブランドロゴの入ったキャップを欲しがり、ストリートを走りまわる。ビリオネアーの夢とコピー商品の夢。

 コトバが金と交換される。イノチや愛が金と交換される。そんな僕らの都市では、サヴァイヴァルする行為をクリエイションと呼ぶ。佐野元春と井上 鑑の第一回目のスポークン・ワーズの夜は、2001年の、あの9月11日から10日たった日のことだった。僕は鎌倉芸術館へ行った、あの雨の夜のことは今でもよく覚えている。

 誰も世界がこんな風になるなんて思ってなかった。テロリストも戦争の犬たちも。僕らは都市に生き、佐野はその都市のノイズや無意識や希望の断片や虚無を拾いあつめ、リズムに乗せ、コトバにして吐き出そうとしていた。誰もがこんな世界がくるなんて思ってなかった。でも悲劇も喜劇も朝が来るように、当たり前の顔をしてやってくる。佐野は、用意したスポークン・ワーズを、身体をパーカッションしながら唄った。そして、「こんな夜には」を即興でやった。「遠く」の、いや、すぐ「近く」にあるビルが崩れ落ちた都市のことを。それは、9.11事件をうたった一番最初の「作品」だった。佐野は、自然体だ。「僕ら」の事件をすぐに作品化すること。それを、その夜語ることは、当然の、リアルなアティテュードだ。その当然のことを感じさせてくれ、共有させてくれたその夜のことを僕は決して忘れない。リアルな小さな事件だった。

 どうやって、この世界を泳げばいい?脳波も心臓のペースメーカーも狂ってしまうこんな世界で。スポークン・ワーズを、ビートニックの子供たちだと言うことはたやすい。しかし、それ以上に大切なのは、それが僕らが生きてゆくために必要なものであるということだ。佐野には、素晴らしい生々しさがある。

 そして再び。「こんな夜」を過ごしに、僕は彼らのスポークン・ワードのパーティーに出かけてゆく。明日、世界が今より少し悲劇的でも、いや、喜劇的であっても、僕らにはスポークン・ワーズがある。そして、佐野元春がいる。






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