Ruido Era


1981/10/31 福岡都久志会館

 オープニング、「彼女はデリケート」の前奏にのり佐野さんは丸いサングラス
をかけ、まさに「飛び出して」来られました。当時この曲は佐野さんの曲として
は馴染みがなく、その出で立ちもあって「佐野元春というのはどういう人だろう
?」と身構えていた聴衆は「ありゃ、変な奴が出てきたなあ(^^;)」と冷ややか
に座ったまま。ただ一人最前列の男性が佐野さんに合わせて踊り始めたのですが
、係員に制止され座らされてしまいました。私はこの時「コンサートとは座って
見るものなんだ」と認識したほどです。
 でもその年に出た「ハートビート」からの楽曲が続くうちに聴衆の間に「けっ
こういいやつだなあ」という空気が生まれてきました。それは「DO WHAT YOU
LIKE」で佐野さんがピアノに腰掛け演奏を始めたのに、2小節くらい弾いて指
を停め観客と佐野さんの間の視界を遮っていたポカリスェットのボトルを
(^ー^)と笑って横にどけて、演奏を再開されたところで確固たるものになっ
たように記憶しています。

 そして13年間ずっとこの瞬間が心に焼き付いているのですが・・・
「3枚目のシングルなんだけど知っている人がいたら一緒に歌って欲しいんだ」
というMCで始まった「ガラスのジェネレーション」のイントロが流れます。
 すると頑なに座り続けていた博多っ子は佐野さんのこの言葉に触発されたよう
にまず前方の列の人が「いいかなあ?」とでも言うように迷いながら立ち上がり
、そうすると後ろの聴衆が「いいに決まってるじゃないか!」と荷物を椅子に置
きました。波が起こるように前から後ろへ皆が佐野さんを受け入れた瞬間 この
時の感動が今を支え、例え佐野さんが明日から演歌歌手やクラシックに転向して
もファンでいると思います。
 アンコールで「昨日広島でアンコールは2回までと医者から言われたんだ。で
もまだ歌いたいんだ」と叫ぶ佐野さんに「いいぞお、またこいよお」と叫ぶ博多
っ子。
 今思えば歴史が始まる瞬間に立ち会えたことを大変嬉しく思います。
 これからも私たちに新しい感動を。そして新しいファンには新しい歴史を。

(moto)