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Mellowhead at 渋谷CLUB QUATTRO
text:山田和弘



取材構成&テキスト: web Cb編集部 山田和弘
取材協力: M's factory, カミングスター

 7月16日、渋谷CLUB QUATTROで行われたMellowheadのツアー最終公演に佐野元春がゲスト出演した。

 Mellowheadは元プレイグスの深沼元昭さんのソロプロジェクトであり、プレイグスは佐野元春ファンにはアルバム「FRUITS」の中の「水上バスに乗って」セッションに参加したことで知られている。深沼さんは「FRUITS」プロモーションのトークショーに元春と一緒に出演したり、その後の元春のツアーにもゲスト出演するなどしており、今回の共演及びライブへのゲスト出演も当時からのその親しい関係から生まれたのであろうことは想像に難くない。

 今年3月に発売されたシングル「エンプティ・ハンズ」という曲は「Mellowhead featuring 佐野元春」名義で出されたものであり、元春がレーベルの独立により活動の自由度を増したことから実現したコラボレーションの第1弾である。

 元春が「佐野元春」としてステージに登場するのはTHE SUNツアー最終日のNHKホール以来であり、ゲスト出演とはいえ久しぶりに「生元春」を体感できるということで元春ファンも多く会場に駆けつけていたようだ。

 ライブ本編では元春と親交も深いGREAT3の片寄明人さんもゲスト出演し、2曲を披露していた。この日のライブでは3人が同時にステージ上に現れることはなかったが、楽屋では元春を囲んでどんな会話がなされていたのだろうか、興味深い。

 ライブ本編が終わりアンコールに入り、バンドメンバーがスタンバイをしたところで深沼さんが話しはじめた。「素晴らしいゲストがもう一人来てくれていますのでさらに盛り上がってください。今日のスペシャルゲスト、佐野元春さんです!」

 会場のすごい盛り上がりの中、白の上下の衣装、黒縁で色の淡いサングラスというスタイルで深沼さんと握手しつつ登場した元春。ステージの真ん中に立つと、「今夜呼んでくれてすごくうれしいです。みんな集まってきてくれてどうもありがとう。」と挨拶。そして「この季節、乗ると気持ちいい、乗り物の歌。もしみんな知っていたら一緒に唄って!」オーディエンスの多くは想像がついているその曲。「水上バスに乗って」と深沼さんが紹介すると、元春のギターで曲が始まった。

 この曲をライブで聴くのは久しぶりだ。オーディエンスも拍手したり手を挙げたり、それぞれの表現で楽しんでいる。元春の楽曲とはいえ、オーディエンスのほとんど皆がこの曲を知っているような印象を受けた。Mellowhead/深沼さんのファンも元春がゲスト出演ということで予習をしてきたのかもしれない。間奏では2人で向かい合って楽しそうにギターを弾いていた。

 曲が終わると元春はエレキギターからアコースティックギターに持ち替えた。これまでのライブではこの曲は元春の代わりに深沼さんが唄っていたのであろう、「いよいよ佐野さん本人に唄ってもらう時が来ました!」という深沼さんの一言に会場はさらに盛り上がる。「エンプティ・ハンズ!」オリジナルよりややスピード感のある仕上がりのその曲はなかなかライブ映えする曲だ。また間奏のピアノが非常に心地よいアレンジになっていた。

 メロディも詩も節回しも、すべて与えられたものを自分からアダプトしていくのは初めてだったという元春であるが、CDのオリジナルを聴いたときにも、ステージを見たときにも全く違和感なく、佐野元春の曲として完全に自分のモノとしているところはさすがだ。

 深沼さんは1969年生まれ。元春ファン層の中心世代であり、佐野元春を良く知るミュージシャンとして佐野元春らしい楽曲を作り、提供したのだろう。ステージを見て、曲が見事に元春にフィットしていると感じた。

 他人の楽曲であり、普段から唄っているわけではないということで元春も少し緊張していたのかもしれない。曲の最後の方で笑顔がこぼれたのが印象的だった。曲が終わり、大きな拍手の中元春は深沼さんらと握手して手を挙げてステージから去っていった。

 それにしても、である。元春が登場したとき、とにかくステージ上での元春の圧倒的な存在感に驚かされた。オーディエンスの多くもそれを感じたことと思う。その存在感の大きさは他のバンドメンバーとの体格の違いとか、ステージの立ち位置とか、照明とか、膨張色である白色の衣装であったこととか、そんなことによって醸し出されたものではない。

 深沼さんの他にも元春とのコラボレーションを希望している若手ミュージシャンは多くいるらしい。佐野元春の新たな一面を引き出すミュージシャンの登場を楽しみに待ちたい。そして僕らファンとしては各ミュージシャンのもつ能力をぶつけ合うことによる相乗効果でさらに素晴らしい作品が生み出されることを期待したい。




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