取材・撮影・構成: 今井健史、森本真也 | デザイン: 小山雅嗣 [Beat Design]
QTムービー制作: 宮田正秀
取材協力: ツイングロース、プロスト
編集協力: M's Factory

 車が工場に到着し、工場長である鈴木氏が出迎えてくれるなか早速工場に入る。倉庫を兼ねた大きな工場には、この年末年始に市場へ出ていく商品が所狭しと積み上げられている。そしてもっとも光が当たる場所にアートボックスのパーツが並べられ、約20人のスタッフによって手際よく組み上げられている。アートボックスは隙間なくパーツが収められるよう、置き方、向き、パーツの重なりなどが駿東氏によって周到に計算されているが、この工場にある機械といえばベルトコンベアだけであり、スタッフの手作業によってボックスの中にパーツが収められていく。
先に掲載した駿東氏のインタビューで「ずっと悩んでたのは、これをアッセンブリーする業者が、ちゃんと魂を込めながら作ってくれるか?」と語っていたが、その意味がこの場を見て明確になった。ベルトコンベアに乗ったボックスにすべてのパーツが収められ、最後にボックスの蓋を閉める様子を眺めているとき、横にいた駿東氏が「ほらね、閉めるときに、魂が込められている感じがするでしょ?」と言った。最初から最後まで人の手による作業。だが雑なところがひとつもない。これは制作から組立に至る全行程で共通のテーマなのだ。



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 約2時間ほどの取材の中、元春が完成したばかりのアートボックスを手にして、嬉しそうに制作過程のエピソードを語っていた。その言葉のひとつひとつには、完成の喜びと、購入してくれた方々への感謝の気持ちで溢れていたのが印象的だった。
 間もなく新生MWSがスタートして1年になる。「Sail on」や「光」の配信、Radio MWS、そして本格的なアーティスト・ストアとしてさまざまな商品を産み出してきたMWSストア。いずれもネットという未だ発展途上のメディアの本質を突いた、ダイレクトかつ初期衝動に溢れた活動であった。そしてこの1年間の活動の集大成ともいえるアートボックスに対して支持を表明してくれた方々の手元に、綺麗にシュリンクされ、一人一人への感謝の意を込めたシリアルNo.が添えられたアートボックスがもうすぐ到着する。
  ここから新しい何かが始まるかも知れないことに期待しながら、待っていてほしい。

佐野元春&駿東 宏 「Word In Motion 2001」対談
「Word In Motion 2001」対談


佐野●今回のアートボックスは、ネットを通じて購入者と対面できたからこそ実現したものなんだ。いったいどれくらいの人たちが買ってくれるか分からないものに対して、出版社やレコード会社のような大手企業はなかなか重い腰が上がらない。でもネットであれば、そうした障壁を越えていける。これからは、効率や合理といった問題にアーティストが頭を悩ませなくてもいい時代が来るかもしれない。いづれにしてもどんなに時代が変わっても大事なことは、その作品が持っている精気のようなもの- Good Soul があるかどうかなんだ。Good Soul を持っている作品はそれがどんなジャンルの作品であっても影響力を発する。もちろん影響っていうのは広さと深さがあって、両方を併せ持つのはなかなか難しい。ビートルズの究極のポップアルバムといわれる『Sgt. Pepper's〜』などはこの両方を兼ね備えたものだね。でもそれは偶然に得られる結果であって作る段階からは計算できない。

駿東●流行やアンテナの形は時代によって変わってくるしね。ところで今回の制作作業を通して惜しむらくは、スポークン・ワーズのライブを体験していないんですよ。鎌倉も行っていないし「Rock & Soul Review Tour」も観ていないんです。僕の記憶にあるスポークンワーズといえば、渋谷ジャンジャンでの矢野顕子さんのライブに佐野さんが出たときの「リアルな現実 本気の現実」。これが印象的でした。

佐野●今回のアートボックスで改めてグラフィックとプリンティングと音楽の関係について掘り下げることができたし、スポークンワーズの可能性についても追求できたと思っている。とにかく非常に良い仕上がりになっているので、ぜひ楽しんでください。

1/23より全国レコードショップでも取り扱っています。詳細はこちらから。 >>> PRE




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