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 8月5日 ROCK IN JAPAN FES.2001 |
「あらゆる鉱物に秘められた黄金の構成はゆっくりとかたちを変えてゆく。」
text: 吉原聖洋 


 雨の予報は今回も覆された。天下御免の晴れ男キャラヴァンの前にはもはや怖いものなど何もない。快晴のひたちなか。佐野元春率いる一行が会場の国営ひたち海浜公園に到着すると、すでに昨日から入っていた古田たかしと井上富雄がバックステージで迎えてくれた。

 バックステージのあちらこちらで挨拶が交わされる。メロディー・セクストンと山本拓夫も含めて、H.K.B.のメンバーは皆、恐ろしく顔が広い。彼らが知らない人たちまでが彼らをよく知っている。一方、佐野のところには渋谷陽一や山崎まさよしをはじめ、さまざまな人たちが挨拶にやって来る。雑誌やテレビのためのインタヴューなどもあり、佐野にはランチを食べる時間もない。でも“棟梁”はとても陽気だ。今日もきっと良いステージになる。そんな気がした。

 ステージの上には強い風が吹いている。でも、嫌な感じの強風ではない。こんなふうに風に吹かれながら演奏するのも野外ライヴの醍醐味のひとつだよな、と思わせてくれるような風。気持ちがいい。

 初披露のスポークン・ワーズ「あぁ、どうしてラブソングは・・・」で幕を開ける意表を突いたオープニングが如何にも佐野らしい。観客からも「カッコいい!」という声が上がる。トリプル・ギターで迫る「99ブルース」に続いて、KYONがエレクトリック・ギターを抱えたままで「コンプリケーション・シェイクダウン」に突入。このまま一気に駆け抜けるのかとも思われたが、“Rock &Soul Review”のオープニング・ナンバー「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」をじっくり聴かせ、さらに同ツアーでもハイライトのひとつだった粘り腰の「ストレンジ・デイズ」でオーディエンスを煽る、という構成と演出が佐野とH.K.B.のキャリアを象徴している。

 20年前からずっとライヴの定番曲であり続けている「君をさがしている」に続いて、ロックンロールの楽しさを凝縮したような「So Young」を持ってきたところも佐野らしい。そして新曲「Sail on」で“いまの佐野元春”をアピールする。当初のセットリストではこれで終わる予定だったのだが、バックステージでの渋谷陽一からの熱心なリクエストに応えて、最後に急遽「サムデイ」を披露。突然のリクエストに応えたためか、佐野は歌詞を間違えてしまったが、これもまた野外ライヴの楽しいハプニングのひとつだ。

 オーディエンスのレスポンスはどの曲でも非常によく、佐野の言葉やミュージシャンたちのプレイに敏感に反応していた。当然のことながら“Rock & Soul Review”とはまたニュアンスの異なるギグだった。真夏の昼下がりの野外ならではの開放感にあふれた演奏はここでしか体験できないものだ。来年の夏も野外のステージで佐野元春を観てみたい、と思った。できるならば来年こそは横浜で。



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