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 4月22日 アースデー・コンサート
佐野元春ファン・アソシエーション 
mofa 編集部 奥山千亜紀 


取材協力: M's factory

 アースデーの4月22日。新緑に包まれた日本武道館で15回目となる「コスモ・アースコンシャス・アクト アースデー・コンサート」に元春が昨年に引き続き出演した。昨年の忌野清志郎との共演もまだ記憶に新しいところだが、今年はステージ構成も異なり、12名のアーティストがリレー形式で登場し弾き語りに近いシンプルなパフォーマンスで、アーティストが伝えたい詩、歌、曲を、地球に対する思いを表現するという。

今回もラジオで日本・世界へ生中継されるためオンタイムでスタート、司会が最初のアーティストを紹介する。「昨年に引き続いての登場です、佐野元春さん」何とオープニングを飾るのは元春だ!ステージ奥中央の装置が左右に別れ、そこから白いシャツに黒のパンツ、そして今年の定番になっている「ヴィジターズ・キャップ」姿の元春が軽やかにステージに現れた。元春ーっ!とあちこちからファンが叫ぶ。

ほどなく小気味よいパーカッションが響き始めた。「ポップチルドレン」だ。ピアノには井上鑑氏。予告どおりのスポークン・ワーズ、会場にいる多くのオーディエンスがのっけから圧倒されたに違いない。ピアノ・パーカッション・ベースで織り成すジャジーなサウンドと切れのあるビートは、ここがどこかの街のジャズバーでもあるかのような錯覚に陥らせてくれる。元春から迸る言葉たち、その言葉が持つ迫力とでもいうのだろうか、独特の空気が流れ出したのだ。いよいよスポークン・ワーズが鎌倉を飛び出した瞬間だった。真っ赤なホリゾントをバックに元春が伸びのよい声で語ると、静寂も喧騒も光も闇も溶け合ってそこから全く新しいものが生まれてくるような、複雑なそれでいて純粋なバイブレーションが波のように押し寄せてくる。

「ポップチルドレン」が終わると、元春は詩をしたためていたペーパーを高らかに投げ捨て帽子を脱いで深々と一礼した。何かがふっきれた、そんな印象を受けた。続いて元春はギターを持ちステージ中央の椅子に座った。2曲目はどのスポークン・ワーズなのかと思っていたところ、再びパーカッションがラテン調にリズムを刻み始めた。これは?と頭をひねった瞬間、「静かな冬のブルースに眠るこの街のニューイヤーズデイ」と元春が唄い始めた。全く予想していなかった「ヤングブラッズ」をここで聴けるとは!ギターとキーボードが更に加わり、新しいアレンジの「ヤングブラッズ」は、元春の押さえた、それでいて深味のあるボーカルにメロディアスな旋律のピアノが絡んで、鮮やかで心地よい仕上がりだ。

その後元春は「次はハナレグミ」と紹介してさっとステージを降りた。思えば12名のアーティスト中、唯一MCがなかった。それもスポークン・ワーズ流か。でも、元春の環境問題への取り組みはファンのみんなが一番よく知っている。特に何を語らなくてもこのさりげなさが、エコロジーを考えるのはそんな特別なことでもないさ、と元春が言っているかのようだ。そう、別段廻りくどいものでもないし構えるものでもない。もっと日常的に、もっと身近に感じるべきものだ。例えば「radiofish」の「エコロジー・レポート」のように。

いずれにしても、もっと聴いていたかったの一言。たった2曲、しかし貴重な2曲。贅沢と言えるのかもしれない。今日のライブのゆったりとした流れ、アース・コンシャスの一体感を最初に形づくった元春。アーティストのリレーはこうして元春から始まった。



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