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 5月 TV番組『僕らの音楽〜OUR MUSIC』
佐野元春ファン・アソシエーション 
mofa 編集部 山田和弘 


取材協力: M's factory

 5月某日、都内のスタジオにてCX系のTV番組『僕らの音楽〜OUR MUSIC』の収録が行われた。この番組は今年4月に始まったばかり。「今の時代には無かった、音楽のリアリティをそのまま伝える純粋でストレートな音楽番組。生演奏でていねいにつくりこんだ良質な音楽と映像をお届けする。」というコンセプトの番組に早くもわれらが佐野元春の登場である。

公式WebサイトMWSにおける「活動開始宣言」以降、元春のマスメディアでのアピアランスはおそらく初めてであろう。その意味で今回の出演は大変注目されるものであった。
またホーボーキングバンドとの共演は昨年7月のミルクジャムツアー最終日以来か、こちらも興味を増幅させた。

スタジオにセットされたステージは元春を中心に据え、コーラス、ヴァイオリンなどのストリングス(金原千恵子グループ)、井上鑑氏、ホーンセクション(B.B.B.B.)そしてホーボーキングバンドという豪華メンバーが一周ぐるっと元春を取り囲むように位置していた。照明その他のセットも派手すぎない、落ち着いた大人の雰囲気。

「これから『SOMEDAY』のリハーサルに入ります。」「それではここで30分休憩に入ります。その後本番に入ります。」
こういうことって番組に出演するミュージシャンがリハーサルのときに自分で言う言葉なのだろうか?などと素人である自分が心配してしまうが、与えられた時間・空間の中で元春自身がより良いステージを築き上げようとしている意欲を感じた。非常に心強い。20人を超えるバンドメンバーたち、そしてそれを取り巻く数十人規模のスタッフたちがそれに呼応しててきぱきと動いていた。

この日の収録は3曲で『月夜を往け』、『SOMEDAY』、『ロックンロール・ナイト』の順に行われた。
まずは新曲『月夜を往け』。ラジオを通じては何度も聴いているこの曲、生で聴くのはもちろん初めてであり、どんな感じになるのかと楽しみであった。この曲のもつ魅力であるポップな感じを保ちつつ、これだけのメンバーがいるからこそ実現できる「音の厚み」が表現されていて素晴らしかった。元春はギターを持たずにパフォーマンス。来るべきライブではどんなスタイルで披露されるのであろうか、非常に楽しみである。
続いては『SOMEDAY』。リハーサルの当初は楽器を持たなかった元春、途中からはギターをもっての演奏。ファンならずとも知るこの曲は、足でリズムを取り、また口をパクパクして唄いながら聴くスタッフ多数。発売から20年以上経ちながらこの認知度、そして古さを全く感じさせないということはすごい。これが元春の言う「楽曲の持つ生命力の強さ」ということなのか。オリジナルに近い演奏を聴きながら「あんまりアレンジを変えすぎるとファンからお叱りを受けちゃうことがあるんだよね(笑)。」と語っていた元春を思い出した。

最後は『ロックンロール・ナイト』。この曲のリハーサル中には2箇所ほどバンドと演奏を確認していた。確認事項は(おそらく)唄い出しのドラムの入り方と中盤のピアノの音の切り方。元春は口頭で説明していたようであったがさすがホーボーキングバンド、元春の意向を一瞬で理解したようで、Dr.kyOnさん(ピアノ)、小田原さん(ドラム)もその箇所だけを一度軽く演奏するだけで元春は両手親指を立てて笑顔でOKサイン。すごく満足そうであった。
この曲には演奏される数分間で曲が持つ世界をその場全体に作り出してしまうすごさがある。この日の演奏は通常のライブ時以上にそれを感じた。ライブさながらにアレンジされた照明セットや、相当広いとはいえライブ会場よりはクローズドなスタジオ空間がそう感じさせたのかもしれない。
演奏後、「まさか地上波でスタジオ収録版の『ロックンロール・ナイト』がフルバージョンで流される時が来るなんて...。」とつぶやく制作スタッフがいた。全く同感である。この曲、このアレンジはライブに行った者だけが体感できる、まさに佐野元春ライブの真髄のような曲のひとつである。この曲をスタジオ収録版で惜しげもなく披露するということはファンとしては感慨深い。この曲のオンエアが番組を見たファンにとって、またあまり佐野元春の曲を聴いたことのない人にとってどう響くだろうか、非常に楽しみである。

やはりミュージシャンというのは音楽に注力する姿がもっともカッコいい。身体全体でリズムを取り、楽器を弾き、歌を唄う。このミュージシャンとして一番自然な行為こそがもっともファンの胸を打つ。
当日は演奏のみの収録であり、残念ながらトーク部分の収録を見ることはできなかったが、結果としてそれは不要であった。言葉はなくとも、その力強いパフォーマンスから元春の現在の強い決意を十分に感じることができたからである。
ミュージシャンはその詩で、演奏で、そしてその身体全体によるパフォーマンスで語る。そこで元春のかつての発言が思い出された―――「1,000の言葉より3分間のロックンロール」。

今回の収録は、まさに元春自身のスタジオ・パフォーマンスを通じた「活動開始宣言」と呼ぶにふさわしいものであった。リハーサル、セットチェンジなど合わせ各曲5〜6回の演奏、7時間以上に及ぶ収録にも関わらず、緊張感を持ちつつも楽しそうな元春をはじめとしたバンドメンバーの表情は、今後の活動への期待をますます増大させるものであった。
元春の強い決意を、その画面を通じてのパフォーマンスから、アルバムから、そしてライブで元春自身からダイレクトに感じたい。佐野元春の次のアクションが待ち遠しい。



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