今井: |
MWSってこの10年で、みんながやりたいこと、思い描いたことを形にしていった場だと思うんです。じゃあ、今みんなは何をやりたい? それをもう一回ぶつけてみてもいいんじゃない?
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道向: |
中継、したいなあ。
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滝口: |
佐野元春が配信元になるのと、佐野元春が参加する企画が分流しちゃって、参加する場は我々が作っていくって流れを作らないと進まない気がする。
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今井: |
僕がやりたいことはねぇ、MWS創設当初からロックコミュニティのひとつの姿として、デッドヘッズの話をしていたんですよ。その考え方を今に発展した形をやってみたい。だから極端な話、佐野元春のビジネスにも働きかけていきたい。たとえばコミュニティがライブツアーを運営して、他の人たちにネットを使ってどんどんシェアしていくとか、そういう手法をみんなで共同体として作っていきたい。現代においてもPHISHがそれやっていたわけだし。
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宮田: |
それはお金が絡む話だけど、言い出しっぺとお金をマネージするのが別だっていい訳だしね。それってEPOのライブであったんですよ。ファンが企画して、チケット販売をして、300人くらい集まるホールなんだけど、完売だった。
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遠藤: |
そこで大事なのは、いかに佐野元春を介入させないかだね(笑)。佐野さん、絶対に面白がって参加してくるから。
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今井: |
現実的に考えれば、チケットだってインターネットで買えるんだから、例えばライブの告知と宣伝を誰かが担当して、そのBlogを立ち上げてね。ライブ音源がiTunes Music Storeにアップされたら、別の誰かがBlogでそれをきちんとレコメンドして、そういった点と点が結ばれている中心がMWSであればいい。
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道向: |
ただオンデマンドでBlogとかが更新されるのと、ライブって作り方が全然違う。だからどっちに力点を置くのかでだいぶ違ってくる。
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遠藤: |
僕はそれが佐野元春Blogっていうので、テンプレとか提供して、みんなに作ってもらえばいいんじゃないかなと思う。それをやることで、またコミュニティを再生してもらっていいんじゃないかな。
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今野: |
BlogだったらTrackbackとかでやれるからね。
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森本: |
CafeBohemiaもフォーラムって形にしていたけど、もう今は個人だよね。そこに自然発生的にコミュニティができるなら、それもよし。
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遠藤: |
だからMWSがやっているニュースとかライブ告知とか、そういうのを全部Trackbackできるようにして、それをネタにBlogで盛り上がるっていうのでいいんじゃない? そうすれば自然にコミュニティとして成熟していくと思う。
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今井: |
となると、MWSの活動としては、そういうものに対してどれだけ面白いネタを提供できるか、っていうのが重要だよな…。でも佐野元春の活動そのものがとんでもなく面白いネタだからいいか。Radiofishが終わって初めての土曜日を昨日過ごしましたけど、この2年間は充実してましたからね。あとTHE SUNが出たらあんだけ盛り上がって、ツアーをやったら新しいファンがついてきて…。逆に言えば、佐野元春の活動がネタにならないようなMWSってマズい。もう少し突っ込んで考えると、例えばいわゆる90年代的な音楽ビジネスって、マーケティング的によくプロデュースされたタレントがいて、大量のテレビスポットを買い占めて、大量の資本を投下して、ほらみんな寄ってこい!っていう中央集権的なやり方だったけど、そういうものじゃなくなってきていると思うんですよ。だから、今このタイミングって、佐野さんにとってラッキーなんじゃないかな。
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道向: |
そこまでやることは全然ないけど、でも佐野さんには仕掛けてほしいなあ。
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今井: |
今はテレビとネットの融合なんて騒がれてますが、全然性質の違うメディアなんだから融合する必要なんてないでしょ。テレビは今でも十分に楽しいので、それはその姿のままそっとしておいて、テレビ的な情報伝達の方法ではないところでネットは発展してほしい。そこで佐野元春がきちんと評価されてほしい。
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道向: |
テレビってライブ放送。今おばちゃんがくだらないことを喋ってますって姿も放送するのがテレビ。インターネットはやはりBlog的というか、常に見れて、常に更新されて。だから住み分けはできる。
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今井: |
そのおばちゃんのくだらない喋りだって、テレビでは演出がされているんですよね。それはそれで楽しいんですよ。でもBlogの世界ってもっと生だし、もっとめちゃくちゃだし、もっと悲惨で、それも結構楽しい。
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遠藤: |
iTunesとiPodの成功って、個人っていう囲いの中に外を取り込む動きにピッタリあっていて、インターネットはそこを加速する装置として相当強い。既存のメディアは自分がイントゥしなきゃいけなかったけど、Blogでは自分のまな板に人をつれて来れる。プレイリストだって、自分の中に音楽を取り込んでいくって行為。そのことに気がついて、企業なんかは大量に資金を投下している。
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今井: |
でも、こと音楽の接し方って(iPodを手にして)これが正しいですよ。自分のなかに音楽を取り込んでいくというのが、本来の音楽の楽しみ。
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遠藤: |
テレビやラジオ、新聞みたいに集団が作って、一方的に配信するのもどうかと思うけど、だからって視野が狭くなりがちな個人が、狭いところにたごまってマスターベーションしているような状況も感心しない。ただ、その流れは止められない。
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今井: |
さっきの繰り返しになるけど、以前はテレビやラジオでまるで洗脳するかのように100万回でも聞かせるっていうスタイルだったけど、iPodが出てくると「ここには私の好きな曲以外入っていません」という、音楽と個人の関係だけになるんだよね。それってBlogと変わらない。
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遠藤: |
それのほうが効率がよいから、あなたが選択したものだけに仕向けるように誘導しているって手法が出てきている。でも結局は自分の好きなものなんだから、それには逆らえない。
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今井: |
そうなると、自分が選んだものが最高だ!って言える場がたくさん出てくるべき。佐野さんのファンは、佐野元春の音楽に人生やられちゃった人たちが多いんで、最高だ!って気持ちが強い。そういう人たちが声を出していって、それは点と点の世界では小さな波かもしれないけど、やがて合わさっていき、大きな波になっていく。その合わさり方をMWSがどう提供できるか。
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道向: |
ライブって場が瞬間湯沸かし器になるよね。場の見せ方としては、年に一度か、2〜3年に一度かはやるべきだよね。
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遠藤: |
きっかけは作って、あとはほっておいたら? ただそこをずっと観察して、何か起こったときの機を逃さないようにする。
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今井: |
10年やってきて十二分に分かっていることだけど、MIPSやMOSTって、見極めや、ものを作ることにもの凄く長けた人たちの集まりなんですよ。デザインだって、プログラムだって、サイトディレクションだって。だからそういうタレントをもったMIPSはもっと前に出て行くべき。もちろん名前を売るって意味じゃなくてね。
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道向: |
あとBlogって考えたとき、経済的な部分をどうするか。反発もあるかもしれないけど、アフェリエイトとかを積極的にやっていくか。
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遠藤: |
佐野元春のチケット販売のアフェリエイトとか?
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今井: |
アフェリエイトって個人宣伝マンのモチベーションを高めるための仕掛けだから、やってもいいんじゃない? 既存の枠組みじゃない経済活動ってことも考えていく。 |
道向: |
あとは、自分のテキストがMWSで取り上げられるってことがモチベーションになる仕組みとか。
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今井: |
それをやりすぎると権威になっちゃうんで、バランスは重要かな。信頼は欲しいけど、権威は欲しくない。
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遠藤: |
MWSは使えるチャンクを膨大にもっているんだから、そろそろ解放してほしいね。
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今井: |
そうしたときに、どこかのBlogやサイトで初めて佐野元春を知った人がいて、その人が「音楽を聴いてみたい」とかって思うその欲望に対して、コミュニティ総体として、きちんと応えられる仕組みができているといい。
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森本: |
MWSが中心にあるって考えは捨てたほうが良いよね。ひょっとしたらMWSを知らない人が、どこかのBlogこそ中心って捉えても、構わない。
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今井: |
そうだね。コンテンツって考えれば、権利関係をクリアした写真や映像、音声が上がっている場はMWSになるわけだけど、コミュニティ全体って考えると、たまたまそういう性質をもったサイトっていうだけ。
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宮田: |
なので、これからの形としては、Blogをそのままやるというわけではなく、Trackbackという行き渡った相互リンクのシステムを使って何かをやっていく。アルバム紹介やハートランドからの手紙…
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今井: |
ハートランドからの手紙については分からないな。今のままの一方通行のほうが奇麗な場合もあるし、そうじゃない内容もあるだろうし…
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滝口: |
そういう仕組みができれば、ハートランドからの手紙自体、変わっていくのかも。
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今野: |
ただ、Trackback自体を整理するような仕組みを追加しないと、破綻するかもしれない。
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今井: |
今までこうやって話をしてきて、10年前の様子から系統立てて考えることができるんだけど、これからの人たちって、コミュニティにしろネットにしろ、凄く感覚的に解釈するわけじゃないですか。だから意識的に分かっている人たちがきちんと形として残してあげないといけないかな。
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宮田: |
なまじ与えられて使えちゃうと、日常にとけ込んじゃって、それが持っているフルの可能性って感じられないでしょ。MIPSは、無いから「あったらいいな」を作ったわけじゃない。だから無いものを作った人にとっては、その体験はずっと残るものだし、これからもそういう人たちが出てきて循環するものだし。で、佐野元春の音楽に惹かれる理由も、それなんだと思う。
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