Tom Pety and the Heartbreakers :
The Last DJ リリース年月日 : 2002/10/23 レコード番号 : B00006JLJU
レーベル(国内): ワーナーミュージックジャパン
■アメリカン・ロックンロールを支えてきた「多面性」
今夏、およそ2年ぶりに観るTom Petty and the Heartbreakersのステージ。Tom Pettyはその美しいブロンドを肩よりも少し長く伸ばし、それを幅広の布で汗止めのように束ねていた。まるでAxl Roseのように。
すでに彼の頭部は薄くなりつつあることを知っていた私には、そのコスチュームが滑稽に映ったものの、相変わらずスタイリッシュだという印象のほうが勝っていた。季節を無視したかのような膝丈ほどの真っ赤なジャケットは、ロックンロールと根底で結びつくファッショナブルなものだ。そういえば、Tom Petty and the Heartbreakersのヴィジュアルはどれもステキなものばかり。彼らは音楽とビジュアル、どちらも欠くことのできないものであることを知っている。
そのことは新曲「The Last DJ」が証明している。9.11の同時多発テロ以降、全米メディアが自粛規制曲を持ったことをモチーフにしているのであろうその歌は、「DJ」という音楽以外の第三者的なものと、彼が好きな「音楽」との結びつきを描いたものだ。両立し難いものの融合。わたしは彼らのこうした妥協を許さない姿勢がとても気に入っている。彼らが1980年代以降、アメリカのロックンロールを支えることができたのはこうした多面性があるからだ。そして彼らと並び、REMの存在があったことをわたしたちは忘れてはならないだろう。(北村和哉)